焼きものを拝見し、織物について勉強したあとは
宇治の「ナナクモ」さんで開催されている上映会へ。

朽木村で30年にわたってフィールドワークされていた
丸谷先生のドキュメンタリー映像を拝見し
お話を伺ってきました。

昔の山村の暮らしと
とても示唆にとんだお話に
いろいろ考えさせられるものがありました。

一番印象的だったのは
村の人たちとの対話を続けていくうちに
「狐や狸に化かされてしまった」
「トチノキの声が聞こえた」
という話がでなくなった時期が共通している
ということ。

それは昭和40年頃なのだそうです。
日本は東京オリンピックから、大阪万博にかけての10年で
大きく姿を変えてしまったのだろう、ということでした。

そしてわたしたちは
便利と快適さと引き換えに、自然と対話する能力を失ってしまった。

以前別の方に
「樹木が目覚める声を聞いたことがある?」
と問われたことがあります。
夜眠りについていた樹木は、夜明けとともに目覚めるのだそうで、そのとき一気にお水を吸い上げるので音がするのだそうです。
そのお話を伺ったとき
「自然と共生できていないのは人間だけだ」
とおっしゃっていたことが印象的でした。

こういうのを信じる、信じないは人それぞれですが
実は、わたしは、一度ならず街路にある銀杏の木に優しくしてもらったことがあるのです。
ただの偶然だったかもしれない。
少女めいたわたしの感受性が勝手にキャッチした絵空事かも知れない。
なのであまり人に話しすることは無いのですが
でも……実感として「本当に優しく慰めてもらった」という印象なんですよね。

なので先生が
「昔の村人のお話では、トチノキは人々に『美味しい実をたくさんあげよう』と語ったそうです」
とおっしゃったのがとても腑に落ちました。

ホントは言葉じゃないんだけろうけど、きっと。
樹木と人々の思いが通じ合った一瞬があったんだろうな…
そんな風に思います。

ナナクモさんは、写真家の森さんのお店。
森さんが自主制作している
『Japan graph』(日本各地の魅力を掘り起こした素敵なグラフ誌)や
日本各地の素敵なやきものなどを販売するほか
アーティストの展覧会やイベントなどを開催されています。

友人たちと手直しした古い家屋がとても素敵で
どこをとってもフォトジェニック。
さすが写真家さんだなあ…と思います。
何度も伺っていますが、行けば行くほど好きになります。

この日は森さんが笠置の山で見つけて来た
八重のガクアジサイがとても美しかった。
花器と後ろの土壁が、本当にマッチして絵になっていました。

27ナナクモアジサイ

ああ…こんなふうな場所で
毎日こんな美しい物を眺めながら
物書きをして暮らしてゆきたいな……

と思いました。

まだまだ先は遠い。
書きたいもの、やりたいもの、やるべきことが山積みで
とうてい余裕はないけれど
いつか、こういう秘密基地を
わたしもゲットしたいものです。