火曜日は雨のなか、大阪までとある幼稚園に行ってきました。

ここの幼児教育はある種独特なのですが
子どもたちが素晴らしく成長するために
小学校のお受験を考える親御さんに大人気。
募集は3日で締切となり
面接試験で3分の1ほど落ちるそうです。

伺う前に預かった資料を拝読していると
子どもたちが作った新聞が掲載されていて
その知的レベルの高さに驚きました。
作文がとても上手で小学生みたい。
内容もとても面白いんです。

実際に園の様子を拝見して
さらに腰を抜かしました。

子どもたちは何もみずに般若心境を唱え(仏教系の幼稚園なのです)
静かに瞑想もしています。

百人一首、石川啄木の詩、小林一茶の俳句を何もみずに大声でそらんじて
四字熟語もふりがななしで読み
難しい熟語の反対語を反射的に即答していました。
合間に先生のピアノにあわせて大声で歌もいます。

手遊びとかじゃなく
子どもむけの歌でもない
大人が酔いしれる美しい言葉に幼稚園から触れて身につけている。

これは意味を理解することが大事なのではなく
美しい言葉を身体に入れることが狙いなのだそう。
それが知能の発達の基礎となり
成長に大きく影響するのだそうです。

もちろん頭だけでなく、身体が健やかなのも大事。
朝一番は全員でサーキットをしてて
高い跳び箱を飛んだり鉄棒をしたり元気いっぱい走り回ってました。

知能、身体、精神。
すべてが整うようなメソッドが確立されているように思いました。
これらが子どもたちの太い根となり幹となり、強く賢く健やかに生きていける大切な基礎となる。

そして、子どもたちのポテンシャルにも改めて感動しました。
この子たちなら、あの新聞くらい書けるだろう……。

わたしはここ数年大学案内の仕事が多く
幼児教育の学生さんや卒業生たちを取材するため
けっこうたくさんの幼稚園や保育園に伺っているのですが
園によって教育方針がびっくりするほどバラバラなんです。
学校じゃないから決められた教育の課程がない。
幼稚園とは、私塾なのだなあ……
改めて実感しました。

どこかの保育園の先生が
「子どもたちはのびのび遊ぶなかから大切なことを学ぶのに、そんな小さな頃から椅子に座らせて勉強させるなんておかしい!」
おっしゃっていました。
保育園は保育の場であり教育はしませんのでそういう意見になるのです。その真逆の極地がこの幼稚園かも知れません。

でも。勉強じゃない、あれは。
受験のための暗記じゃない。
だったら何なのだろう。
どちらかというと修業に近いかも知れない。

そう思っていたら
園長先生が「守破離」という日本古来の学びについてお話くださいました。
この「守破離」については内田樹先生や白州正子さんの本で読んだことがあり
「ああ、なるほど……」と納得しました。


武道、剣道、柔道、合気道から茶道まで
「道」といわれる修行は全部そうで
はじめに型があり、ひたすらそれを真似て、真似て、真似て、真似て、身体にいれて学んでいく(守)。
それをずっと続けているうちに、確固たる基礎が完成され、あるとき自分の世界を開くことができる(破)。
そこを極めつくし辿り着ける彼方が(離)といったところでしょうか。
終わりのない生涯をかけた修業の世界の話でもあり
ここの幼稚園はそうした日本古来の学びを取りいれているのです。

前の日は陶芸家の先生から、ロクロについて同じようなお話をうかがったばかりでもありました。
道のつくもの以外も実は同じかも知れません。
能もダンスも、野球やサッカーも。
そしてそれは文章にも通じることで
わたし自身が長い仕事人生のなかで身をもって実感していることでもあります。

なるほどなあ……
だが、しかし……
これはひたすら修練する「守」を続けていくうちに
やっと自分なりの世界が見えて、ぼんやり「破」について
「こういうことなのかなあ…?」と思えるもので
どれだけ言葉を尽くしても、体感がないと理解は難しいと思うのです。

園としては、単なるお受験のための幼稚園ではなく
こうした人を
育てる根本にこだわった園であることを発信したいわけですが……ここまでをちゃんと理解できる人ってそうそういないよねえ……。

深い……!すごい……!!
と、感動しつつ、でも思わず
「これは……………もう分かる人だけでええんちゃいます?」
とぽろっと言ってしまいました。

園長大爆笑。
そしてわたしははっと自分の立場を思い出し 
「あっ、それをわかりやすく伝えるのがわたしの仕事でした、すみませんっっ!」
と平謝り(笑)

ありえん……我ながら。

でも何故か園長先生はそんなわたしに怒ることなく
むしろえらく喜んでくださり
本をたくさんプレゼントしてくださいました。
(優しい方で良かったです……)

実はいま、別の仕事で本を一冊聞き書きしており
それにものすごくパワーがかかるので
この幼稚園のお話がきたとき正直受けるか迷ったのですが……
大好きで信頼できる方が声をかけてくださったし普通の幼稚園の案内だと思っていたので
何とかなるかな、と思って引き受けたのです。

しかしそんな簡単な話では全くありませんでした。
量はともかく、内容が深すぎる……。
上っ面ではなく、どこまで核心に迫り、読者に届けられるか。

うわおー。
今仕事2つしかしてないけど
どっちも自分の限界に挑戦!という感じです。
シビレル夏なりそうだわ。
頑張ろう。

「世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事を持つことです」
園の子どもたちが大声で暗唱していた
福沢諭吉センセイの言葉を糧に乗り切ろうと思います。